第17回 製作システムの運用を開始してみよう!

集計・分析がIT経営の肝

さて、そろそろ終盤である。ここまでの内容を理解出来ていれば、品目を登録させて登録情報をそのままユーザに返す「受注リスト」・「在庫リスト」・「購買リスト」などの管理システムは時間を掛けて自前構築が可能である。経営上、気になるデータは今月の売上や各製品のコスト構成、取引先別の利益率といった複雑な情報をSelectしてくる必要がある。仮にDBに受注テーブル「list」があったとして図の様な情報を管理していたとする

・Select sum(`money`) from `list`
と実施すれば今まで登録された受注の合計金額が返ってくる。
・Select sum(`money`) from `list` group by `name`
とすれば今まで登録された品目別の受注の合計金額が返ってくる
・Select sum(`money`) from `list` where `date` like ‘2019-10%’ group by `name`
とすれば2019年10月の品目の受注の合計金額が返ってくる。


        ※図参照、実際のSQL分と返り値を確認出来る。

また図には無いが売上に加えて支払を管理項目に追加して
・Select `name` from `list` where (`money` – `支払`) < ‘0’
とすれば売上よりも支払が大きかった商品番号が返ってくる。赤字のリストを提示して社内の問題把握が可能になる。

第7回で「Select」は簡素に説明しているが、取得データを管理して意義のある情報として取得するにはある程度、技量が求められる、前回(14回)でのエクセル管理でも良いし、SQLを理解してくればMZで集計して皆に共有する事も出来る様になる。SQLはこれ自体で本が一冊ある位なので奥は深い。

本連載で何度も記載しているが取ったデータの活用がIT化の本質であって、その道中に社内で走りながら、検討を重ねる事に重要な意味がある。単純に既製品を買ってきた場合、この効果が得られない。小規模集団だからこそ出来る事があるのである。

部品単品の原価を集計すれば、改善ポイントの把握が出来る。仮に図の製品Aの様にデータ上で状況を把握しておけば、工場長と「この製品Aは洗浄工程の作業性に問題あるか?」と尋ねる事が出来る、すると「重いから段取りに時間が掛かる」とか「都合の良い箱が無くて非効率」とか「2度洗いしている」など具体的課題が判る為、ピンポイントで改善したら良い。現場は何となくやり辛いと思っているが、「そういうもんだ」と思って作業している事も結構ある。


  ※商品Aの工程別集計グラフの例※

現場の作業性を検証するレベルから年間を通した会社運営バランスを見たりと使い方が色々ある事が理解出来ると思う。エクセル抽出すれば、仮にa%下がったら、上がったらなど仮定の計算も出来る為、年度方針を策定したり出来る、また随時データを取っているので方針に対して、今年度の進捗把握も可能である。


※エクセルで管理する損益分岐の例※ 

さいごに・・・

聖徳ゼロテックがMZと出会い、システム構築から運用開始してもう14年経過している。IT化するという事に焦点を絞られがちであるが、本質は異なっている。システム構築を初めて2年目位からヨチヨチ歩きで運用を開始した、3・4年位使っていくと、管理項目によってはシステム管理するより、ホワイトボードや紙が良かったりするので自社で落しどころが見えてくる。IT化するという小さい視点で捉えると「単純にパッケージシステムを導入したら、費用対効果がどうのこうの・・」「自社開発は大変だ」という話で終わってしまう。システム構築をしている最中は全く気がつかなかったのであるが、自社をどう捉えて行くのか?何をしたら良くなるのか?というテーマに少しずつ置き換わって行くので、会社運営自体が良くなってくる、これこそが真に取り組むメリットなのである。なかなかピンと来て貰えない寂しさはあるが、本質はこれであると思っている。

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